医学的に見た「つわり」とは何か?妊娠悪阻との違いも明確に解説
妊娠初期に現れる「つわり」は、医学的には「妊娠悪阻」とは異なる軽度の症状として扱われます。つわりとは、妊娠5週目から始まり、8週〜10週頃にピークを迎え、16週頃には落ち着くことが多いとされている妊娠に伴う生理的反応です。吐き気や嘔吐、食欲不振、匂いへの過敏反応などが主な症状であり、妊娠の正常な経過において多くの妊婦が経験するものとされています。
一方、妊娠悪阻とはつわりの中でも特に重症な状態を指し、医学的には診断基準が明確に設けられています。具体的には体重が妊娠前より5%以上減少し、脱水症状があり、ケトン体が尿中に検出されるような場合に妊娠悪阻と診断されます。放置すると母体にも胎児にも深刻な影響を与えることがあるため、早期の受診と適切な治療が必要です。
以下に、つわりと妊娠悪阻の違いをまとめた表を示します。
項目
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つわり
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妊娠悪阻
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発症時期
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妊娠5〜6週頃から
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妊娠5〜6週頃から
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主な症状
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吐き気、嘔吐、食欲不振
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頻回の嘔吐、著しい体重減少、脱水
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症状の持続
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一時的、日内変動あり
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継続的、改善傾向が乏しい
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体重変化
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一時的な減少
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妊娠前体重の5%以上の減少
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医療的介入
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基本的に不要(生活改善で対処)
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点滴や入院が必要な場合あり
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このように、妊婦本人が「つわりがひどい」と感じていても、それが医学的に妊娠悪阻であるかどうかは別問題であり、正確な診断が必要です。症状の程度が日常生活に支障を来すレベルであれば、我慢せず婦人科医に相談することが大切です。
また、近年注目されているホルモンであるGDF15は、妊娠初期の胎児側から母体へ分泌され、母体に吐き気などの反応を引き起こす一因とされる研究結果が発表されました。GDF15の量が多い妊婦ほどつわりが重い傾向にあることが判明しており、今後さらなる解明が進めば、つわりの早期診断や治療の一助となる可能性が期待されています。
妊娠中の体調変化は「個人差」が大きく、つわりのない妊婦もいれば、寝込んでしまうほど症状が重い妊婦も存在します。つわりの程度や種類は一人ひとり異なるため、「他の人と比べておかしいのでは」と思い詰める必要はありません。
妊婦が安心して妊娠期を過ごすためには、自分の症状を正しく理解し、必要であれば医療機関に相談する姿勢が重要です。特に妊娠初期は身体も心も大きく変化する時期であり、自分にとって適切なケアを受けることが、母体と胎児の健康を守る第一歩となります。
代表的なつわりの種類と症状一覧・あなたの症状はどのタイプ?
つわりにはいくつかのタイプが存在し、症状の現れ方も人それぞれ異なります。自分の症状がどのタイプに当てはまるのかを知ることで、より適切な対処法や生活の工夫が可能になります。以下に代表的なつわりの種類を一覧でまとめました。
つわりの種類
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主な症状
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特徴
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吐きづわり
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吐き気、嘔吐、食欲不振
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最も多いタイプ。特に朝方に悪化しやすい
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食べづわり
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空腹になると気持ち悪くなる
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少量ずつ頻繁に食べることで軽減可能
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においづわり
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匂いに敏感になり気分が悪くなる
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香水や洗剤、調理中のにおいなどが引き金に
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眠気づわり
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常に眠い、起きていられない
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睡眠ホルモン(プロゲステロン)の影響が大きい
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よだれづわり
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よだれが異常に増え飲み込めない
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口の中が常に不快でストレスにつながる
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頭痛・めまい型
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頭が重い、立ちくらみ、集中力低下
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栄養・水分不足や自律神経の乱れが関係
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こうした症状は単独で出る場合もあれば、複数が同時に現れることもあります。また日によって症状の強さや種類が変化するケースも多く、「昨日は食べられたのに今日は全く受け付けない」といった波があるのも特徴です。
妊婦によっては「えづくだけで吐けない」「ずっと気持ち悪いけど食べられる」など、症状の表現も多様です。これらの症状が常に継続するわけではなく、体調や環境により変動するため、焦らず自分の身体の声に耳を傾けることが大切です。
つわりの症状タイプを把握することは、適切なセルフケアや周囲の理解を得るためにも役立ちます。たとえば「においづわり」の人は調理を避けたり、「食べづわり」の人は持ち歩きできる軽食を常備することで日常の不快感を軽減できます。
つわりのタイプを診断するチェックリストやタイプ診断ツールを活用することで、自分の症状に合わせた具体的な対策が見つかる可能性もあります。婦人科で相談すれば、必要に応じて栄養補助食品や漢方薬なども提案してもらえるため、我慢しすぎず適切なサポートを受けることを推奨します。
また、症状の強さや種類は妊娠週数によっても変化します。妊娠が進むにつれて自然と軽減していくことが多いですが、症状が続く場合は脱水や栄養不足に陥らないよう注意が必要です。つわりは母体の負担を軽減し、赤ちゃんを守るための防御反応と捉え、無理をせず自分の体を労わる意識が重要です。